「吹奏楽ができるエコを!」とのかけ声とともに、田中正敏らが発起人となって2011年2月に活動を開始したウインドバンド・フォー・グリーン。当初は眠っている楽器のリユースなどを推進する予定でしたが、本格的な活動を始める前に東日本大震災後が発生してしまいました。震災によって被災地では多くの吹奏楽部が楽器を失ったため、被災地の学校に楽器などを贈る活動を優先するようになったのです。この活動を通じてご縁ができたのが県立塩竃高校です。2011年12月、同校の吹奏楽部に楽器やリードを贈呈したことが始まりで、その後も遠くから見守る日々が続いていました。一方、同校吹奏楽部顧問の平山先生は、当時のクラリネット奏者たちが紡ぎだす音色や吹き方に納得がいっておらず、「どうにか現状を変えられないか」と悩んでいたそうです。そんな時に平山先生は、埼玉栄高等学校の合宿に参加します。そして、田中が指導するクラリネット・パートの音色に衝撃を受けたのでした。その時、偶然にも田中が居合わせたため、ただちに指導を依頼し、塩釜高校吹奏楽部のクラリネット・パートのみなさんと一緒に練習することになったのです。
第1回は既報の通り、5月3日に実施しました。生徒たちを緊張させないようにと、ユーモアを織り交ぜながら進める田中流のレッスンはとても好評でした。そして6月1日(日)には、第2回目のレッスンを実施しました。前回はとにかくしっかり吹くことだけを目標に練習をしましたが、今回は前回よりもステップアップを目指すレッスンとなりました。吹奏楽を構成する他の楽器に埋もれず、聞き手にクラリネットの存在がきちんと認識できるようにするための練習を行ったのです。埋もれない音にするためには、聞き手に届く音色作りが大切です。そのため、フォーカス(輪郭)を絞った音を出すことにチャレンジしました。少やや難易度が高いレッスンでしたが、生徒たちは前回に田中が与えたアドバイスを素直に受け止め、一回目のレッスン後にしっかりと復習をしていたためか、驚くべき飲み込みの速さを見せてくれました。また、前回と同様に田中が与える課題に対して、生徒たちは一様に「できるようになりたい!」との強い思いを持ち、意欲的な姿勢でレッスンに臨んでいたのが印象的でした。
レッスン後、生徒たちに田中流レッスンへの率直な感想をお聞きしたところ、「自分に合ったアドバイスをしてもらえるから、その場で成長を実感できる」、「正しいことを、面白く楽しく教えてもらえるので、次の練習がとても楽しみ」といった声を聞くことができました。
この出張レッスンを通じて、「聞き手への配慮が感じられる音楽を表現できるようになってもらいたい」と語る田中正敏。これからも同校に出向いての出張レッスン活動を続ける予定です。
(文/写真:田中絵里子)